画布に向かって半世紀、京都府福知山市大江町二箇下の大槻博路さん(69)が、11日から京都市中京区のギャラリー「クリエイツ洛」で作品展「今・いま」を開く。ギャラリーによる企画展。長くグレー主体の作品を生み出していたのが、ライトブルーの時代を迎え、さらに赤・茶系へと進化している「いま」を切り取る。
地域を元気にするさまざまな取り組みでリーダー役を務める大槻さんだが、本業は画家。若い頃から美術家団体の全国組織で中核をなし、いまは画壇の重責を担う立場にいる。
武蔵野美大を卒業し、古里大江に戻ってから農に精を出しつつ絵を描き続けて来た。二箇下は旧町時代から「町の一番端っこ。声をあげ続けないと行政に気にも留めてもらえず、置き去りになる」と、自分たちの力で地域活性化に取り組むようになった。ホタルまつりを開いたりしての都市との交流、環境美化など。そのうち活動の場は集落内にとどまらず、大江全体にと広がっていった。
近年は棚田での酒米作りと地酒造りが話題となっている。
こうした活動への気概は絵にも現れ、地に足を付けた力強い作品が高く評価されてきた。所属する美術団体「新槐樹社」では早くから関西の役員になり、2001年には棚田を主題にして、大江に生きる人びと、雪の下に息づく草などを描いた大作「鬼の里より“冬の棚田”」が新槐樹社展で内閣総理大臣賞に選ばれた。その後も活躍は続き、いま新槐樹社では委員長、副委員長に次ぐ事務局長の大任に就いている。
自分の手で土を耕しながら絵筆を握る毎日から生まれる作品は、カラフルさとは対局のグレーを基調にした重厚な抽象画で、見る人に自然と命への讃歌、そして困難に負けない人びとの息吹を伝えてきた。
ところが年を追うごとに作品の抽象化が進み、画壇で地位を得た大槻さんですら「自分の作品はひとから受け入れられるのだろうか」と、不安がよぎる時期があったという。そんな時、デビュー当時から作品を見てくれていた美術評論家が、大槻さんの意図をそのまま絵からくみとってくれていたことが分かり、改めて自信を持った。キャンバスにのせる絵の具の配色に変化が現れ、次第にライトブルー主体の作品が増えてきた。
「日本社会を見渡すと、正さねばならないことがあふれている。全国から福知山に目を転じれば、たびたびの災害に遭っている。暗い、つらいことばかり。だけども自分の村には希望がある」。そんな「希望」がブルーの中に宿っているのだという。
今年は更に赤茶系統の色がキャンバスを占めるようになってきた。村を、大江を元気にと、多くの人が手を取り合って活動している、その喜びが絵からあふれ出ている。
京都での作品展では、グレー、ブルー、レッド各150号の大作を中心に30点ほどを展示する。会期は16日まで。ギャラリーは丸太町通りにある。同ギャラリーは、電話075(708)7898。
写真=ひたむきに画布に向かう大槻さん。絵筆には赤がのる
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