7月豪雨で道路や家屋への浸水被害が広がっていく危険な状況の中、被災地の京都府福知山市大江町で元気な赤ちゃんが誕生した。母親は市街地の病院で出産する予定だったが、冠水やがけ崩れで道路が寸断されて行けず、産科の無い地元の分院で出産。医師や看護師らの手厚い処置や住民らの協力のおかげで、無事に産声を聞くことができた。両親は「周りの人たちの支えのおかげで、赤ちゃんの顔を見ることができました。いくら感謝してもしきれない」と話す。
赤ちゃんの両親は福知山市大江町金屋の古高多聞さん(28)、桜子さん(28)。桜子さんは今月5日が出産予定日で、少し遅れて11日に市立市民病院へ入院する予定だった。しかし7日午前5時ごろ、陣痛が起きた。
前日からの豪雨で自宅前の宮川の水位が上がってきていたが、周辺の道路は通れたため、同6時ごろ多門さんの車で病院へ向かおうとしたところ、河守の国道175号が冠水していた。
綾部市へ抜けるう回ルートも考えたが、こちらも無理と分かり、いったん自宅へ戻って市民病院と消防署に連絡。ドクターヘリを飛ばして病院まで行くか、大江分院で出産するかの2択だったが、ヘリは悪天候で飛ばすことができず、分院で産む決心をした。
分院には同8時ごろに入院。産科は無いが、内科の医師2人と看護師2人が処置にあたった。
分院に来る前に立ち寄った避難所で、桜子さんの陣痛を知った地元在住の市民病院の看護師も分院に駆け付け、赤ちゃんの体温が低くならないようにするためのヒーターやタオル、ガーゼなどの準備をした。
医師らは本院の産科、小児科の医師らと連絡を取りながら処置し、午後2時8分に男児が無事に誕生。このころには水が分院の近くまできていた。
■ミルクや哺乳瓶を-ラインで協力依頼、すぐ集まる■
出産後は赤ちゃんが飲むミルクや哺乳瓶が必要になったが、浸水して薬局に行けなかったことから、分院で出産の準備をした地元の看護師がラインで知り合いにミルクなどの提供を呼びかけた。雨は続いていたが、次々と寄せられ、数日使える量が集まった。
多聞さん、桜子さんとも看護師で、緊急事態にも落ち着いてはいたものの、桜子さんはドクターヘリが飛ばないと分かった時は「不安でしょうがなかった」と言う。
多聞さんは「仕事でもお産の現場には立ち会ったことが無かったので、(妻には)声をかけるぐらいで、何もできませんでした」と振り返る。
■温かい支援に感謝■
2人は「家を出るのがもう少し遅ければ、自分たちだけで自宅で産まなければならなかった。みなさんの温かい支援と幸運が重なり、何とか危機を乗り越えることができました。本当にありがたかった」と感謝する。
赤ちゃんは男児で、2900グラムで生まれた。名前は天真ちゃん。2人は「落ち着いたら世話になった人たちにお礼に回りたい」と言い、天真ちゃんが大きくなったら「この日のことを伝えたい」と話している。
写真=無事に生まれた天真ちゃんを見つめる古高さん家族(手前右はお姉ちゃんで長女の乃々花ちゃん)
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