「岩津ねぎ」で有名になった兵庫県朝来市岩津に、古い寺院がある。高野山真言宗鷲原寺。創建は仏教が伝来した古墳時代の終わりとされている。さまざまな文化財が伝わり、一堂に紹介する企画展「しろがね護る寺」が朝来市埋蔵文化財センター「古代あさご館」で開催されている。20日には関連講座も開かれる。
国道312号の生野への峠にさしかかる手前あたりを右折、2キロほど入った所にある鷲原寺。連綿と歴史を重ね、特に中世には山岳寺院として大きな力を持っていたという。
本堂から更に1キロほど参道を登った山の奥に、切り立った崖に貼り付くようにして建てられた奥の院「岩屋観音」があり、石仏群が県指定文化財になっている。
また、応仁の乱で西軍の総大将となった山名宗全(山名持豊)が寄進した絹本著色仏画十二天像が、大事に守り伝えられて来た。1幅ごとに山名氏の花押がある貴重な史料。12幅のうち「風天」のみ失われたが、江戸時代に人びとが改めて寄進しており、多くの人たちから大切にされてきた寺院だということが分かる。
企画展では、この仏画12幅を中心に、節分の際に数珠繰りをする大数珠、これまでに行われた発掘調査の成果などを展示している。
■20日に関連講座■
20日の講座は午後1時30分から3時にかけて、埋文センターの前岡恵美子学芸員が「山の寺-中世鷲原寺と岩津・元岩津地域のひと・風景」と題して講演する。
古代は国家鎮護を祈る公的機関だった寺院が、中世に至ると権力を持ち、寺社勢力として存在感を放つようになった経緯を解説し、鷲原寺の存在がどのような意義を持っていたのか、また、それを取り巻く人びととともに、どのような風景を作り上げていたかのかを話す。無料。
埋文センターは道の駅但馬のまほろば(北近畿豊岡自動車道PA、朝来市山東町大月)にある。企画展の会期は6月3日までで、時間は午前9時から午後5時まで。月曜休館。観覧無料。電話079(670)7330。
写真上=江戸時代に寄進された十二天「風天」(部分)。ほかの11幅には山名宗全の花押がある
写真下=古墳時代の終わりごろから歴史を重ねてきた鷲原寺
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