重い障害に負けず、力強い命の絵を描く尾松正憲さん(67)の作品展が、12月1日から3日まで京都府綾部市青野町、グンゼ博物苑・集蔵(グンゼスクエア内)で開かれる。尾松さんの絵に心を揺さぶられた福知山、綾部の人たちが支援して開催する。入場無料。
尾松さんは、生まれつきの脳性まひで手足が不自由なため、障害者福祉施設で成長し、成人後は福知山市日吉ケ丘の旧信愛育成苑で暮らしていた。唯一の楽しみは絵を描くこと。試しにと応募してみた1989年の福知山市展に入選。これが人生の転機となった。
熱心な姿を見守っていた指導員たちが「才能を伸ばしてあげたい」と願い、つてを頼って大江町二箇下の画家、大槻博路さんに依頼すると、二つ返事で快諾。大槻さんは忙しい時間を縫って手弁当で指導に通った。
初めの頃、尾松さんは福知山城や長田野噴水公園などの風景を描写していたが、大槻さんに連れ添ってもらい自分が生まれた兵庫県丹波市市島町の寺を訪ね、長い石段をはうようにして登り、力強い仁王像を前にした時から、絵が変わった。見たままを描き移すのではなく、自分の心に映った姿をカンバスにぶつけるようになった。
絵筆を指に挟み、何時間でも集中して絵に向かう。言葉は不自由だが、絵なら自分の思いを存分に伝えることが出来た。
生きることへの自信も生まれ、育成苑を出て兵庫県内の自立訓練施設に移り、懸命に訓練を続けた。15年前からは市島町中竹田の県営住宅で一人暮らしをしている。週に2、3回、ヘルパーの来訪を受けての生活。体の機能低下が進み、今は自力で歩くことはもとより、はって移動するのもままならない。手の力も弱ってきた。
絵を描く準備をするのも一苦労。車いすに座ったまま、ベッドの上に置いたカンバスにかぶさるようにして、油絵用ナイフを動かす。手が届かないので、カンバスを回転させながら描く。この方法だと50号のサイズを手がけるのがやっと。それでも制作の意欲は衰えない。見る人の心に迫る作品が、握りしめた指から生まれ続ける。
指導してきた大槻さんは「絵は、取り組む姿勢というものが作品に出る。私が尾松さんから学ぶものも多い。師弟ではなく、絵を描く仲間だと思っている」という。
技法ではなく感性で訴える作品は、地方よりも中央の画壇で評価され、1996年に全国公募展の新槐樹社新人賞を受けた。現在新槐樹社会員。大槻さんは「障害者の絵として見るのではなく、絵から生きる力を得てきた人の作品として見てほしい」と話している。
作品展は「尾松正憲と仲間たち展」と題し、尾松さんが10年前に完成させた最後の100号大作4、5点をはじめ、50号を中心に20点ほどを展示。大槻さんや仲間の作品も出品する。時間は午前10時から午後5時(最終日4時)まで。
問い合わせは電話0773(57)0123の大槻さん。
写真=自分で座って制作できていたころの尾松さん。今は体力が落ちているが意欲は衰えない
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