難病の拡張型心筋症と診断され、闘病生活を送る京都府福知山市蛇ケ端の後一尊君(2)が、アメリカでの心臓移植に向けて、11月13日に渡米することが決まった。尊君を支援しようと、両親の友人や元同僚らで昨年11月末に組織した「たけるくんを救う会」(八尾正幸代表)に寄せられた募金は、目標額の3億2千万円にほぼ到達。両親の後一充宏さん(33)、美優紀さん(27)は「温かいご支援のおかげで、渡米できることを、とてもうれしく思います。本当にありがとうございました」と感謝している。
拡張型心筋症は、心筋が伸びて、血液を送るポンプ機能が弱くなるもので、尊君は生後4カ月で発覚。「薬による内科的治療で効果がない場合、心臓移植しかない」と診断された。
常に脳梗塞、脳出血などのリスクがつきまとい、感染症も引き起こしやすい。国内での移植は、何年先になるか分からないことから、両親はアメリカでの心臓移植の道を選んだ。
テキサス小児病院での受け入れが決まったものの、移植にかかる費用は医療前払い金(デポジット)や医療予備費、チャーター機の手配など渡航費、現地滞在費などで3億2千万円と膨大。資金面での支援を−と、救う会が立ち上がった。
救う会では、お城まつりや成人式といったイベント会場、大型スーパーや百貨店前など、市内外で募金活動を実施。500カ所以上に募金箱を設置したほか、取り組みを知った市内の団体、個人も協力した。
チャリティーのスポーツ大会やイベントの開催、また中学校ではアルミ缶を回収し、収益を救う会に寄付。福知山公立大生、高校生も街頭募金を行うなど、温かい支援の輪が広がった。
また、尊君とは別の救う会から余剰金の寄付もあり、これまでに9団体から2億4611万558円が寄せられた。このことも、取り組みを強力に後押しした。
■一時は体調急変■
現在も、尊君は小児用補助人工心臓を装着し、大阪府内の病院に入院している。容体は安定しているものの、これまでには体調が急変し、肝臓からの出血が止まらなくなり、命の危険にさらされたこともあった。
このような状況で、半年という募金の期間目標も過ぎた。目標額にも到達していなかったが、一日も早く手術を受けさせたいと、9月27日に両親はデポジット2億3144万4500円を、テキサスの病院に支払い、渡米への準備を進めた。
そして10月29日現在、集まった寄付総額は3億1854万5908円で、目標額の3億2千万円に達成する見込みとなり、11月13日に渡米することが決定。渡米後は、尊君の体の状態を見る検査をし、移植手術の順番を待つことになる。
両親は「移動中に何か起きるかもしれないし、手術日も未定で、尊の体力がもつかどうかも不安です。それでも、尊なら乗り越えてくれると信じています」と力強く語る。
救う会の森本克則副代表(59)は「ボランティア不足など、苦労はたくさんありましたが、渡米が決まって本当にうれしく思います。元気になって日本に帰ってきてほしい」とエールを送る。
募金の収支報告については、「回収できていない募金箱などもあり、収支の確定はまだ先になりますが、感謝の気持ちとともに、しっかりと報告したい」と話していた。
写真=渡米が決まった尊君と父の充宏さん(両親提供)
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