生まれつき全盲の長澤弘子さん(84)が編み物を楽しんでいる。子どものころから続け、70年を優に超える。指先の感覚だけを頼りに操るかぎ針が滑らかに進むさまは、だれをも驚かせる。
小学2年生のころに始めたのをきっかけに、我流でこつこつと続けてきた。1985年ごろからは、京都府福知山市内記二丁目の市総合福祉会館で毎月開かれている視覚障害者創作教室の一つの編み物教室に精力的に通う。苦労もあるが、「『毛糸代がなくなってきた』とか言いながら編んどります」とあっけらかん。
編みの段の数え方は、立てた親指を使う。付け根から指先までで、ちょうど8段。編んだところに当てると段ずれなどの失敗もすぐわかる。
難しい柄編みでセーター、カーディガンなどをたくさん作り、周囲の人たちを驚かせている。
編み物教室に通う弱視の女性は「長澤さんを見習わないと、と思って始めたんです」と話し、健常者のヘルパーは「私たちよりうまい」と目を丸くする。教室の指導をして15年近くになる山段佐紀子さんも「長澤さんは壁にぶつかっても、とにかく諦めない。時間はかかるけれど、作品を必ず完成させます。すごいの一言に尽きます」とたたえる。
■手を動かし出すと没頭して寡黙に■
「1人でやるよりみんなでやるほうがいい。認めてもらえるし」と照れ交じりに笑う長澤さん。周りの人との会話は楽しいが、一度編み始めるとひたすら没頭して寡黙に。周囲はそれを分かっているから、温かく見守る。
長澤さんは料理や生け花もする。「見えんでも、やろう思たらできるもんなんやねえ」と、表情はまったく曇らない。
写真=編み物に没頭する長澤さん
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