不足する福祉人材の確保に向けて、福知山市内では民間施設と行政とが協力して対策に取り組んでいる。掲げるのは「若者の福祉への関心の高まり」だ。
公益社団法人日本介護福祉士養成施設協会がまとめた2016年度の介護福祉士養成校の入学者数は、5割を切る大幅な定員割れとなった。福知山市が市内6高校に聞いた16年3月卒業生の養成校への進学は12人で、卒業生全体の1%にとどまる。福祉事業所への就職は14人だった。
ただでさえ、なり手が少ないところに、離職率が特に高い3年未満で辞めていく中にも若者たちがいる。理由はさまざまだが、「利用者を理解できない」「汚物処理、床ずれを初めて見てショックを受ける」など、自分のイメージと実際の現場とが違う「ミスマッチ」が見られるという。
12法人67事業所が加盟する福知山民間社会福祉施設連絡協議会の廣田真会長は「最初から即戦力とはいわない。ミスマッチも、フォローをすれば解決できるものもある。コミュニケーションができて、虐待に近づかないような人であれば、施設側は一からでも育てていく流れになっている」と両手を広げて待つ姿勢を示す。
■全施設が府の育成認証を取得・宣言■
福祉連協の事業所は、人材育成・定着への取り組みで基準を満たすことにより、京都府が認める「きょうと福祉人材育成認証制度」を活用できる。
加盟事業所の7割程度が取得済みで、残りも認証への意思表明をする宣言事業所になっている。今のところ市内での事例はないが、更なる上位認証もあり、人材育成への意識向上を図る客観的な指標ともなる。
■福祉は特殊? 高齢者と接する機会減り■
「福祉の特殊感」も問題の一つだ。核家族化が進み、子どもたちは祖父母との同居が減った。重度の障害がある人と接する機会も多くはない。「年老いて介護が必要になること、障害に対する支援が必要であることが非日常的で、福祉そのものに特殊感が出てしまっている」と、廣田会長は指摘する。
連協と市とでつくるワーキングチーム・福祉人材PRプロジェクトは、介護職PRのポスター、ビデオ、ロゴマークを製作。介護の日の11月11日に合わせて駅北口広場で大規模なイベント「介護の日大作戦」を開く。これらの活動は高校生や一般の人との接点を生む。人を笑顔にできるやりがいのある仕事。その魅力を訴えて「職業選択の一つとして福祉を見てほしい」という思いを託す。
新規就労者が定着しないと、次に入ってくる人を指導する中堅職員が育たない。そうなると、新規就労者が入りづらいという負のスパイラルに陥る恐れがある。
対策は現職のキャリアアップ教育。有資格者の離職率が低いことからも、介護福祉士、初任者研修(旧ヘルパー2級)の養成講座を実施して全体のレベル向上と長く仕事を続けていける自信につなげていきたいという狙いがある。養成講座は他職種からの転職を考えている人も受けることができる。市が、自主財源で受講費の補助をして支えている。
少子高齢化の進行、障害の有無にかかわらず、誰もが住み良い共生社会の実現へ、福祉業界が果たす役割は今後、さらに大きくなる。働きたい意欲、やりがいをいかに高めていけるかがカギを握る。
写真=職員のキャリアアップ対策で開いた介護福祉士養成講座
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