介護現場を中心に、福祉業界の人材不足が深刻化している。国の試算では、団塊の世代が全て75歳以上になる2025年には、全国で介護職員が38万人不足すると見込む。京都府福知山市内も例外ではなく、すでに不足感が生じている。新卒者が新しい職場に着く時期を前にして、現状と課題を追った。
「人手はずっと足りないかな」。市内の高齢者、障害者福祉施設関係者たちの多くが口にする。
福知山市が16年度に市内の高齢者施設63事業所に聞き取り調査した結果、「人員の不足感がある数」は計105人。国の配置基準は満たすが十分ではない、との数字が含まれているものの、人材を求める現場の声は大きい。
■3年未満の離職食い止めがカギ■
全国的な課題の一つとして挙げられるのが、新規就労者の離職率だ。一定の改善は見られるものの、他業種に比べるとまだ高い。
公益財団法人介護労働安定センターが、全国の介護保険サービス実施事業所から無作為抽出した事業所と、そこで働く労働者を対象にした15年度アンケート調査(有効回答者数9005事業所=有効回収率51・0%、同2万1848人=有効回収率41・3%)で、正規・非正規の介護職員と訪問介護員の勤務年数と離職率の関係について調べている。
調査結果は、勤務3年未満の離職率が25%~35%と最も高く、3年以上5年未満が18%~28%。5年以上になると10%強程度に落ち着く。
やめた理由は「職場の人間関係に問題があった」が25%で最多。次いで「法人や施設・事業所の理念や運営のあり方に不満があった」が22%、「他に良い仕事、職場があった」が19%と続く。
人間関係について悩む人が多いことへの業界内の認識は高く、「職員同士の仕事に対する考え方の食い違い」「トイレ介助など重労働を押し付けられる」などがよくいわれる。
ある施設管理者は「『なんでもきちっとしなければいけない』という人がいれば『生活の一部だから利用者がいいといえばいいでしょう』という人もいる。価値観が違う中で密接に関わり合って仕事をすれば、ぎくしゃくしやすくはなると思う」と話す。
福知山市内の事業所では、職員からの不平、不満を聞く窓口を設けたり、新入職員へのきめ細やかなフォローをする世話役を付けるチューター制度を活用して対策に努めている。
■給料は改善傾向だが国の抜本対策が必要■
介護の業界は、「きつい、給料がやすい、汚い」の3Kイメージで敬遠されてきたが、介護職員の給料は国の処遇改善加算で増加傾向にはある。
ただ、報酬単価が下がる中で加算が恒久的に続くとの保障がないことに、給料を払う側の施設には、常に不安が付きまとう。
複数の法人幹部が漏らす。「賞与の算定基準になる基本給に乗せれば最善なのだろうが、難しい。もし加算がなくなった時に一度上げたものを下げるということはできない」
福祉施策の流れが、施設入所型から在宅支援型へと移行し始めているが、デイサービスなど日中のみの勤務はパート、それも女性が占める割合が高い。
日中のみ働く30歳代の女性は「人手不足感がある。独身男性が家庭を持ちたいと展望を持てる給料であれば、きっと人は増える」と訴える。施設側は「正職員を雇うと赤字は避けられない。国は施設に内部留保があるというが、どこにあるのか。もう少し実情に即した対策がほしい」と語る。
写真=少子高齢化の進行、障害の有無にかかわらず誰もが住みよい共生社会の実現へ、不足する福祉職員確保は喫緊の課題
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