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両丹日日新聞2016年5月 4日のニュース

福知山の体験が海外で強みに NHKの榎原美樹さん大興寺で講演

大興寺で講演する榎原さん 福知山ゆかりのジャーナリスト、NHK編集長の榎原美樹さんを迎えての講演会が、福知山市正明寺の臨済宗大興寺(有賀祖道住職)で、このほど開かれた。福知山での思い出や、東日本大震災で流出してアメリカまで流れ着いた神社の鳥居について取材していることなどを聴かせた。

 下豊地区7カ寺の檀家女性による仏教婦人会(大槻安子会長)の総会で、講話研修として企画された。榎原さんの父、正美さんが地元出身で、実家が檀家という縁から実現。11年春に続いての講演となった。

 榎原さんは大阪大学を1987年に卒業してNHK入局。2000年から「ニュース10」のキャスターを務め、現在は国際放送局ワールドニュース部ニュースライン編集長を務めている。

 これまでにヨーロッパ総局、アジア総局、アメリカ総局など海外特派員として11年半にわたり世界を取材して回ってきたが、現場で役立ったのが、幼い時から正美さんの実家へ盆・正月になると里帰りをし、日本人が古くから守ってきた田畑の風景や豊かな自然の中で営んできた生活を経験できたことだという。

 「まさに“ザ・ニッポン”の原風景を知っていることで、海外で『日本とはどういう国ですか』と聞かれたときに、大都会だけではない日本について話すことができたことは大きな強み」だったともいう。

 海外では、ボスニア戦争、中東パレスチナ問題、米国同時多発テロ事件、アフガン戦争、イラク戦争、インド洋大津波、ハイチ地震など、紛争や災害について報道することが多くあった。東日本大震災が起きた時には、ニューヨークに駐在していて、すぐに現場に飛ぶわけにはいかず、「忸怩たる思いで日本からの映像をテレビで見ていました」と振り返る。

 その後、津波で亡くなった2人のアメリカ人の若者たちの遺族や関係者を取材することになり、東北の英語指導助手をしていた20代の2人が、いかに日本を愛していたかや、彼らが亡くなった後も遺族や友人らが遺志を引き継いでいることを伝えてきた。

 いまは、津波に襲われた青森県八戸市の漁港から流出した二つの鳥居の笠木(一番上に組まれた横木)が、2年後にアメリカ西海岸オレゴン州の浜辺に打ち上げらたエピソードを追っている。

 地元の人たちが見つけ、どこから来たのかを探し当て、日米の企業の支援も受けて昨年10月に里帰りした。修復が進み、今年5月にアメリカからも関係者が来日して、再建を祝う式典が開かれる予定となっている。

 オレゴン州と日本の間には戦前から日本の移民が渡ったり、貿易を行うなど長い歴史があり、5年前の震災でも被災地について心配する人びとが多くいて、2本の笠木が漂着したというニュースを聞き、「日本に帰してあげよう」という声が多くあがったという。

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 榎原さんは、こうした声や動きをドキュメンタリーとして記録することに注力。取材を通じ、「大震災の被害は甚大で、数えきれない悲劇が起きましたが、震災がきっかけとなり、世界各国の人びととつながったり、新たな友情が生まれたりと、日本を励ましてくれることも生まれてきています。こうしたポジティブな面にも光をあて、世界へ伝えてゆく仕事を続けていきたいと思っています」と結んだ。


写真上=大興寺で講演する榎原さん
写真下=昨年10月、青森県八戸市大久喜地区に返還された2本の笠木(写真は榎原さん提供)

    

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