古くから塗り物のほか天然の接着剤としても重宝されてきた漆。そんな漆が現代の若い男女の仲を取り持ち、近畿唯一の産地、福知山市夜久野町で仏前結婚式が挙げられた。晴れの日を迎えたのは町内に住む山内(旧姓・竹内)耕祐さん(27)=城陽市出身=と麻美さん(30)=亀岡市出身。ともに伝統ある丹波漆にかかわる仕事をしていたのが縁で知り合い、めでたくゴールインした。本堂での式と披露宴には、親族だけでなく、地元の人らも出席し、2人の門出を祝った。
新郎の耕祐さんは富山大学芸術文化学部を卒業後、府民俗無形文化財に指定されている漆採集「丹波の漆掻(か)き」の技を習得したいと、一昨年に同町下千原へ移住した。NPO法人丹波漆の一員に加わり、1300年の丹波漆の歴史を守る後継者として期待されている。
新婦の麻美さんは夜久野高原、道の駅農匠の郷内、市やくの木と漆の館で市臨時職員として働いていた。施設は漆器作品や資料を通して丹波漆を学べるほか、地域の漆にまつわる活動の拠点になっていて、竹内さんは何度も足を運ぶうちに麻美さんの「おおらかな性格」にひかれ、付き合い始めた。
「そろそろ身を固めよう」と考えていた時、自身が所属する市消防団下夜久野分団第5部の部長を務める中千原、瑞光寺の今西雅人住職に「うちの寺で式を挙げないか」と誘われた。師匠にあたるNPO法人丹波漆の岡本嘉明理事長に媒酌人を依頼し、この日を迎えた。
瑞光寺で一般の仏前結婚式が行われるのは初めて。式師を務める21世の今西住職は、地元の人たちにも協力を呼びかけて準備を進め、式や披露宴には親族や友人のほか、上、中、下千原の自治会長、地元消防団員、若者組織の三葉会メンバー、授業の中で漆の勉強をしている地元の小中一貫校夜久野学園の児童有志ら30人余りが参列した。
式は23日に挙行。和服姿の2人が入場した後、数珠交換、三三九度などがあり、2人は「互いに力を合わせて人生の信義を全うします」と誓い、今西住職が「感謝の気持ちを忘れず、明るい家庭を築かれることを願います」と述べた。
地元では結婚式が始まる時間が有線放送で流され、晴れ姿を見ようと訪れた人もいた。三葉会が中心になって計画した披露宴は盛り上がり、5時間以上続いた。
2人は「地域の方々にも参列して祝福していただき、これほど幸せなことはありません。寺院ならではの厳かな雰囲気のなかで式を挙げることができ、一生の思い出になりました」と感激。「互いに助け合いながら漆器制作もしており、丹波漆の伝統を引き継いでいきたい」と語っていた。
写真=誓約文を読み上げる新郎の耕祐さん
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