2013年9月の台風18号水害で自宅が浸水した福知山市石原の住民3人が30日、浸水被害の頻発地と分かっていながら、市が情報を提供せずに造成地を販売したのは不当だとして、市を相手取り、京都地裁に提訴した。建物の修繕費や慰謝料など、3人で計約2千万円の損害賠償を求めている。
原告側の福知山市造成地水害弁護団によると、3人は市が造成した土地を、09年12月〜10年9月の間に購入し、自宅を建築。台風18号による大雨で、近くの由良川や支流の大谷川が氾濫し、自宅が床上浸水などの被害を受けた。
1953年の台風13号、04年の台風23号でも一帯は冠水しており、「市は浸水の危険性を認識しながら対策を取らず、過去の水害の発生状況やリスクを説明せずに売却し、住民を被災させた」と主張している。
弁護団の上田敦弁護士は「自治体が開発した土地の浸水リスクについて、行政の説明責任を問う全国初の訴訟。これまでの水害被害訴訟とは、一線を画するものだ」という。
市によると、造成地は石原土地区画整理事業として、1993年に施工。約75億円をかけて農地だった土地を整備し、99年から販売を開始した。14年度末までに、市の保留地3万8834平方メートルのうち、約43%を売却している。
原告の3人が土地を購入した当時、販売を担当していた土木建設部の用地販売促進室は、すでに無く、市は「浸水リスクを説明していたかどうか、現時点では把握できていない」という。
ただし12年度に財務部資産活用課が販売を受け持つようになってからは、最終的な購入の意思決定までに、過去の水害履歴が明記された物件調書やハザードマップなどで、水害の危険性を説明している。
訴訟について、市は「今後、訴状が届いてから内容を精査し、対応していきたい」とコメントしている。
■市内で記者会見も■
京都地裁に提訴した30日、弁護団は福知山市内で記者会見し、石原地区での現地説明会も行った。原告のうち、居合さんと山岡さんが出席し、自身の思いを語った。
居合さんは「なぜ購入する前に、情報を教えてくれなかったのか。いまも雨が降るたび不安だ」。山岡さんは「本気で住民を守る気持ちを持ってほしい」と、市への思いを訴えた。
写真=台風18号水害で被災した居合さん宅一帯。多くの住民が家屋に取り残され、ボートでの救出活動も行われた
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