貴重な丹波漆を車体塗装に使った日本初の「漆塗りのバス」を、京都交通が11月から府北部−東京路線に導入する。丹後ちりめんの振り袖をイメージしたあでやかな花柄もあしらい、府北部の魅力を首都圏や沿線にアピールする。
■府北部と東京結ぶ路線に■
導入するのは舞鶴、綾部、福知山、亀岡と東京(浜松町・品川)を結ぶ夜行高速バス「シルフィード」号。車体は京都府の観光戦略「海の京都」にちなんで濃い青をベースにして、車体後部へ花柄が流れるように広がるデザイン。漆は車体前方にアクセントとして入れる朱色のカーブラインに使う。
カーブの先端部分(フロント側)は朱の顔料を混ぜた漆を塗り、その上に半透明の透漆を塗り重ねた「朱溜塗」という技法を使い、カーブ後方は漆で貼り付けた金箔の上に半透明の漆を塗り重ねる「白檀塗」の技法を使う。
府無形民俗文化財「丹波の漆掻き」を守り伝えるNPO法人丹波漆が協力し、NPOの若手職人、竹内耕祐さんが福知山市夜久野町千原の工房で車体パーツに漆塗りをしている。丹波漆は、質が良いものの、採取量が少なく、今回のバスに使う量は年間採取量の5分の2に相当する。
貴重な漆を丁寧に塗り、じっくり時間をかけて磨きをかけ、また塗りを重ねてと、何度も工程を繰り返す。バスは「丹波漆の走る作品展」にもなるだけに、集中力を切らさず作業に励んでいる。
■京都市の研究所が紫外線に強い精製法開発■
現代では食器類など小さく高価な作品に使うイメージが強い漆だが、古くから天然塗料として文化財や生活の様々な場面で使われてきた。近年も内装材などとして多様な試行がされているが、車の塗装となると、困難な壁があった。
漆にとって最大の敵は紫外線。屋外を走る自動車にとって、紫外線は避けられない障壁だった。この問題が京都市産業技術総合研究所が開発した漆の新しい精製方法で解決。紫外線にさらされても色あせず強い漆を作り出すことができた。
洗車機などでの傷への耐性については、テスト用の小さなパネルを既存車両に貼り付けて数カ月前から実証中で、課題を見つけて解決した。
NPO丹波漆の岡本嘉明理事長は「炎天下の高熱や寒冷期の低温については、漆は強いので問題ない」と話し、「これを機に、漆塗りのバスが増えてくれたらうれしい」と夢を膨らませる。京都交通社は「みなさんにロマンあふれる旅をお楽しみいただきたいです」としている。
写真上=11月から導入予定の漆塗りバス
写真下=車体パーツに根気よく漆を塗り重ねる竹内さん
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