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両丹日日新聞2015年7月20日のニュース

終戦70年:戦火を逃れ学童疎開 つらい日々励まし過ごす

0720nakatu.jpg 第2次世界大戦の末期、都市に住む国民学校初等科の児童を、農山村に移動させる「学童疎開」が行われた。戦火を避けさせるためで、福知山市内でも、大阪市大淀区(現北区の一部)の児童らを受け入れ、子どもたちは旅館や寺院などで生活した。このうち、来迎院(池田)と教念寺(野花)の両住職に、当時の疎開してきた子どもたちの様子のほか、戦争に対する思いなどを話してもらった。

■住職応召の中で受け入れ■

 来迎院は1944年9月から約1年にわたって中津南国民学校の5年生24人を受け入れていた。朝倉義寛住職(77)は、当時小学1年生。記憶をたどりながら、疎開に関するエピソードを語ってくれた。

 朝倉住職は「先代の住職が応召で、寺の運営もままならない中での受け入れでした。疎開児童たちは、寺に来た晩、みんな大泣きしていましたね。寂しかったんでしょう」と語る。

 また空襲警報時には、学校から下校しないといけない決まりになっていたといい、引率の先生が大きな松の木で子どもたちの身を隠しながら、疎開児童と一緒に寺まで帰ることもあった。
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 食への不安は常にあり、当時の主食である麦めしやサツマイモの芋めし、おかゆでは満たされず、子どもたちは常におなかをすかせていた。そんな状況のため、「腹いっぱい食べさせてやりたい」と、野菜を分けてくれる村の人もいた。

 村人らの支援に、疎開児童だった女性から「六人部は優しく、心温まる第二の古里です」と書かれた手紙が、寺に届いたこともあるという。

 朝倉住職は「火の用心の呼びかけを一緒にした記憶などが残っていて、懐かしい。『自分を育ててくれた第二の古里』と思ってくれる人がいる。ただ疎開児童たちは自由が無く、食糧難の時代で村人全員から歓迎されていたわけでもなかった。つらいことも多かったでしょう」と振り返る。

 「いまの時代は、戦争に対する反省の気持ちが、徐々に薄れてきているように感じる。戦争というのは、子どもたちにまで、しんどい思いをさせるもの。二度と起こしてはならない」


写真=中津南国民学校の児童ら(来迎院)
写真=当時の記憶をたどりながら話す来迎院の朝倉住職


■ひもじさに悩まされる日々■
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 教念寺には豊崎国民学校の3、4年生26人が滞在した。資料などを基に、矢野利生住職(67)から話を聞いた。

 疎開当時、先代の住職はビルマに出征中で、矢野住職の叔父にあたる氷上寿夫さんが、寺の留守を預かっていた。

 矢野住職は、「児童たちから『兄ちゃん』と呼ばれ、とても親しまれていたそうです」といい、寺を離れる際には、寄せ書きも贈られたという。
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 当時の様子は、疎開児童らが1986年に発行した「感想文集」に記されている。大野光子さんは「親に甘えたい小学生のとき、戦争のためとはいえ、親元を離れて疎開で味わった強烈な体験は、性格形成に大きな影響を与えた。疎開当時は、毎日ひもじい思いに悩まされていた」という。

 さらに「イモがゆが嫌だったこと、大豆ごはんでおなかをこわしたこと、本堂の縁に並んでシラミ取りをしたことなど、思い出すのはつらくて寂しかったことばかり」と振り返っている。

 一方で、「物質的に恵まれた生活が、本当に幸せなのでしょうか」と問いかけ、「あの苦しい時代にこそ、いまでは得ることのできない大切なものがあった。子どもや孫に、あのような体験をさせたくないが、当時は乏しきを分かち合い、お互いに励まし合うことで、心が通じ合っていたのではないか」と締めくくられている。

 矢野住職は「私は戦後生まれで、苦しい時代をよく知りません。しかし、この文集や疎開されていた人たちの話、またイギリス軍の捕虜となり、強制労働をさせられた父が、晩年に寝言で苦しそうに号令をかける姿などを見てきました」という。

 そのため、「二度と戦争をしてはいけないという気持ちと、寺に残された資料や写真を活用し、当時の状況を子どもたちに伝えていかねばと、使命を感じています」と話す


写真=豊里国民学校の児童ら(教念寺)
写真=資料を基に当時の様子を話す教念寺の矢野住職

    

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