「誰にでも分かりやすく、防犯を呼びかけたい」。昨秋から福知山署に赴任し、福知山駅前交番に勤務している巡査部長、永井麻衣子さん(33)は、着任間もなく、11月の駅前交番だよりに、特殊詐欺防止の4コマ漫画を載せた。これまでの赴任地でも漫画を通して啓発に力を注いできた。得意分野を生かして、これからは福知山で−と、意気込んでいる。
■美術の教員免許取得■
滋賀県出身。父親が県警の警察官だったこともあり、子どものころから警察官に憧れがあった。絵を描くことも大好きだったため、「将来は、絵の仕事か警察官かどちらかに」という夢を抱いていた。
県内の大学の教育学部に入り、絵画や立体作品など芸術の基礎などを学び、美術教員免許を取得した。だが、卒業後は交通巡視員として西陣署(現・上京署)に勤務。その後、山科署に勤めていた07年に警察官になった。府警本部で交通指導などをし、田辺署を経て今に至っている。
初めて漫画を描いたのは本部に勤めていた時。国税徴収法や地方税法に関する分厚い本について「難しい」と話す同僚たちに、イラストを描いて見せた。これが分かりやすかったため、本の内容を漫画にまとめることになった。
中身をしっかり理解して描くのは大変だったが、「漫画を通じて、勉強しやすくなってもらえたら」との思いを込めて仕上げた。完成後、「分かりやすかった。ありがとう」と声を掛けられ、役に立てたことが本当にうれしかったと振り返る。
■防犯ポイントを分かりやすく■
自転車の乗り方が悪かった中学生のマナー向上を漫画で啓発したり、金融機関に振り込め詐欺防止の4コマ漫画を掲示したりと、親しみやすい絵柄で地域が安全になるよう努めてきた。
同志社大学の学生と永井さんら署員が話し合って、学生に身近な犯罪防止を呼びかける漫画を描いたこともあり、地域に密着した活動を続けてきた。
描き方は独学。「絵の力を生かしつつ、ポイントを伝えるのが難しくて」。非番の日にテーマに沿ったアイデアを喫茶店などでいくつか描き出した後は、空いている時間を見つけ、自宅で集中して仕上げる。
「外でアイデアを出す時は、『これができないと帰らない』という気合で臨んでいます。でも、気分が乗っている時とそうじゃない時の波はありますね」。紙とにらめっこして、どうしてもペンが進まない時は一時休憩。好きな漫画を見たり、小説の読書にふける。「そうしているうちにヒントをもらうこともあるので不思議です」と笑う。
■市民に身近な交番を目指し■
転勤が多く、人との出会いや別れもたくさんある。立ち番をしていて名前や顔を覚えてくれた地域の人たちから、「転勤なんやって。残念やわ」と言ってもらえた時には、胸が熱くなった。かつての先輩や上司など支えてくれる人たちがいること、人と人との温かな交流のおかげで、この11年間、警察の仕事に携わってこられた。
これまでは交通関係を主にしてきたが、福知山では交番勤務。交番は警察官として犯人を逮捕したり、一般市民へ防犯を呼びかけたり、さまざま仕事がある。「女性ならではの親しみやすさで、身近に感じてもらえたらうれしい。そのために見守り隊など地域の人たちとの活動にも積極的に関わっていきたいです」
体力的に大変なことも多い。男性署員と同じように、無線や警棒などを携えたベストはずっしりと重い。3日ごとの24時間勤務も同じように回ってくる。「正直きつい時もありますが、やりがいを感じています」
初めは「かっこいい」という憧れで就いた仕事だが、今では具体的な目標がはっきり見えてきた。「一人ひとりへのきめ細やかな対応を心がけて、目の前の人のためにできることを全力でやりたい」
警察の仕事と絵を描くこと、夢を両方かなえ、福知山での新しい出会いを楽しみにしている。
写真=駅前交番から得意の4コマ漫画で防犯発信する永井巡査部長
写真=これまで防犯に貢献してきた4コマ漫画など
写真=部屋の隅にある作業用スペース。真剣な表情で机に向かう
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