福知山市をはじめ京都府内の市は、明智光秀をNHK大河ドラマにと「誘致」活動を連携して続けているが、朝来市では同じくNHKの朝ドラに名乗りを上げている。提案しているのは地元ゆかりの教育者で児童文学作家の森はなさん。署名活動やミュージカル公演などを展開し、いまは市内の美術館で特別展を開いている。
森はなさんは1909年(明治42年)に朝来市和田山町宮田で生まれ、大蔵小学校に入学。熱心な教師との出会いもあって高等科のころから作文に熱中するようになった。15歳で但馬を離れて明石師範学校へ進み、生涯の伴侶となる森種樹さんと出会う。
卒業後は郷里の学校を希望して赴任。種樹さんと3年間に2千通を超す手紙を交換する大恋愛をして結婚。夫婦で高砂市の小学校へ転任した。
52年(昭和27年)に、播磨を舞台にした学校劇を創作して第1回NHK近畿学校劇コンクールで最優秀賞を受賞。以後も受賞を重ね、放送開始したばかりのテレビへの出演も果たした。
そして73年。64歳で処女作「じろはったん」を刊行、大きな話題となった。
戦時中の但馬を舞台にした物語で、主人公のじろはったんは、村の人たちに温かく見守られながら暮らす知恵遅れの青年。心優しく純粋で、竹やり訓練では、的にされるわらの人形がかわいそうだと、すがりついて訓練を止めるほどだった。
兄弟のようにしていた親友の新やんが出征、村には戦死の知らせが届くが、じろはったんは一生懸命に字を練習し、やっと「しんやん」と書けるようになって手紙を送る。
学童疎開してきた児童や教師たちとの交流なども通して、助け合うことの大切さなどを訴えかける作品。英語、ドイツ語などに翻訳され、海外でも読み継がれている。
82年には「こんこんさまにさしあげそうろう」で絵本にっぽん大賞を受賞。「海とめんどりとがいこつめがね」「おさよつばき」など次々と出版し、89年に80歳で亡くなった。
自身が学び、教壇に立った大蔵小学校では「助け合い」の心を伝えて行こうと、森作品の読み聞かせを続け、大蔵地区では思いやりと温かいふれあいを大切にした「じろはったん村」づくりが進められている。
また、市は93年には和田山町内の小学校に森さんの代表作品を50冊ずつ備え、集団読書ができるようにし、2010年から朝ドラ採用に向けた署名活動が始まり、PR活動も活発化してきた。
■書斎を再現、恋文も展示 あさご芸術の森■
森はなさんの特別展は、あさご芸術の森美術館(多々良木)で12月7日まで開いている。「森はなとふるさと−但馬あさご」をテーマに、直筆原稿や書籍、梶山俊夫さんの挿絵原画、森さんが書いた恋文も展示。書斎を再現したコーナーも設けた。29日午後1時30分からは、じろはったんの会による紙芝居がある。
美術館は一般500円、高校大学生300円、小中学生200円。時間は午前10時から午後5時(入館は4時30分)まで。水曜休館。電話079(670)4111。
写真上=「じろはったん」などを書いた森はなさん
写真下=書斎を再現して展示した(あさご芸術の森美術館)
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