懐かしい農村の風景、里に暮らす人びとの生活などを独特の作風で表現してきた農民人形作家、渡辺うめさん(養父市八鹿町宿南)が、9月に107歳で亡くなった。やさしい人柄をしのび、養父市は市制10周年記念事業として特別展「あぜみちの詩・ふるさと宿南」展を、18日から宿南ふれあい倶楽部(養父市八鹿町宿南)で開くことにした。無料。
1907年(明治40年)に青森市で生まれた渡辺さんは、北海道大学付属病院看護法講習科を卒業後、1935年(昭和10年)から東京都内で看護婦として働き、このころから人形作りを独学で始めた。
戦争のため44年に夫の故郷、宿南へ。農に励みながら人形作りを続け、79年からは当時の八鹿町中央公民館で手作り人形教室の講師を務めるようになった。
若い頃から様々な美術展で賞を受け、兵庫県文化功労賞などが贈られているが、渡辺さんの作品は賞以上に人びとの心をとらえてきた。
手がけるのは昭和30年代の農村を題材にした作品。若嫁をいたわりながら女二人で作業をする「むしろ織り」や、家の手伝いをする子どもたちなど、家族が力を合わせて暮らしていた時代を、いきいきと表現する。自然への畏敬と感謝を忘れず、膝を折り、おだやかな顔で手を合わせる老人と子どもたちの姿には「朝の祈り」と題を付けた。
機械化される前の農作業や農閑期の手仕事を描写した作品も目を引く。むしろを敷いて脱穀をする「千歯こき」。子守りをしながらの小豆選り。細工がしやすいよう丁寧に木槌で打つ「わら打ち」。自分たちの足を洗う前に牛の汗を流す親子など、今では見られない情景がとどめられている。
「ふるさと宿南」展では、これら人形のほか油絵なども展示する。11月9日まで。
25日には宿南の川東公民館で特別企画「うめさんを語る」が行われる。渡辺さんの長女(埼玉県在住)と、熱心なファンたちによる「友の会」の事務局長(加古川市在住)、地元住民たちがトークを繰り広げる催し。
いずれも問い合わせは全天候運動場、電話079(663)2021。
写真=渡辺うめさん92歳の時の作品「母」。いつも農村の暮らしを愛情いっぱいに表現した
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