姫髪山に丹波大文字の火をともし続けて62年。福知山市新庄の蘆田芳郎さん(85)は昨年で引退し、先ごろ、大文字の主催団体の一つ、市仏教振興会の中川昭徳会長から感謝状を受けた。“大”仕事をやり遂げ、「山を下りる」ことに、未練はない。
地元の青年会の役員として、大文字が始まった昭和27年から携わった。当時22歳。「始まりを知っている唯一の生き証人になりました」
■初期には炎上して「犬」文字も■
見る人の心を落ち着かせてくれる大文字だが、始まったころは失敗の連続で、山上ではみんなはらはらしていた。
1年目は別の木に燃え移って山火事のようになり、慌てて切った木の枝でたたき消した。2年目はよく雨が降る年で薪が乾きにくく十分に炎が上がらず、3年目は「大」の文字のそばに置いていた草に火が燃え移り、大ではなく「犬」になった。
「『犬』の大文字と揶揄(やゆ)されましてな」と苦笑いする。
それから、京都の大文字を視察。「刈った草は事前に燃やしておくこと」などのアドバイスを受けたおかげで4回目以降は大きな失敗もなく、「むしろ京都の大文字よりきれいと評価する人もいます」と胸を張る。
85歳でやめようと決めていた。年に6回ほど山に登るが、それがしんどいからという訳ではない。「モノレールもできたし、登ろうと思えば、どうちゅうことはない。けれど、若い人を養成しないと駄目だと思って。年がいった者が居座っていると、みんなが動きにくくなる」
これまで、下から大文字を見たことがなく、今年は初めて自宅から家族と一緒に見ようと思っていたが、大雨で史上初めて中止になった。残念だったが、「来年こそは」と、今から楽しみにしている。
写真=「山を下り」て感謝状を受けた蘆田さん
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