WEB両丹

きょうあったいい話、夕飯までに届けます。京都府福知山市の情報を満載した新聞社サイト

タブメニュー

両丹日日新聞2014年8月31日のニュース

震災で転居の男性 ウメ栽培に新たな活路

0831umesaibai.jpg 2011年の東日本大震災による津波被害で福知山市に転居した岩手県大槌町出身の前川さん(61)=市寺在住=が、今年から福知山市和久寺の梅園で、ウメ栽培の手伝いを始めた。管理する地元の元JA役員の長岡弥生さん(81)に教えを乞い、懸命に栽培方法を学んでいる。元漁師で、ウメ栽培の経験はないが、長岡さんは「腕の力が強く、器用な男。将来は後継者として栽培を任せてもいい」と期待を寄せている。

 前川さんは大槌町の海を見渡す高台に住み、自衛官を2年間務めたあと、憧れの漁師となり、地元だけでなく、北海道や和歌山県沖にも出た。500トン級の船に乗ってベーリング海峡での漁もした。

 「荒れた海に投げ出されて一命を取り留めたこともある。でも、漁師をやめようと思ったことは一度もない。海で死ねれば本望」というほど海を愛していた。

 津波に襲われたのは、自分の船を持ち、アワビやウニ漁を続けていた時だった。朝に漁を終え、高さ50メートルほどの高台にある自宅に戻っていたため、身の危険は免れた。しかし、町のほとんどが壊滅的な被害を受け、親族や仲が良かった友人8人を亡くした。所有の船も失い、「生計を立てるには漁師を離れるしかなかった」と振り返る。

 福知山に引っ越したのは震災から1カ月後。かつて出稼ぎの高所作業で滞在したことがあり、その時に知り合った友人が親身になって世話をしてくれ、居住先や仕事も短期ながら見つかった。さらに、石原に広大な畑を借りることができ、漁師から農家へと転身して歩む決意を固めた。

■野菜栽培講習受け知識と技術を習得■

 農業の知識はまったくなかったが、一昨年夏に開かれた野菜栽培講習会を受講したことが、大きな自信につながった。8回にわたる講習で「土づくりから苗の定植、栽培管理、出荷方法まで教わることができ、何とかやれそうだと思った」。

 さらに、何度も長岡さん宅に足を運ぶうちにウメ栽培の手伝いに誘われ、山の斜面に植わる約250本のウメの消毒を一日でやり遂げた。やる気を認められ、今年2月から本格的に栽培の手伝いを始めた。

 現在、梅園近くのビニールハウスで、日光消毒を兼ねた土用干しの作業を2人で一緒にしている。例年なら8月下旬には終わるが、今年は台風11号や豪雨の影響があり、9月上旬までかかりそうだという。

 前川さんは石原に畑を借りて黒大豆、ダイコンなどの栽培をしているが、昨秋に続いて今夏も冠水し、黒大豆は病害虫が発生する恐れが出ている。短期の道路工事などの仕事が生活の収入源となっている。それでも「ウメの栽培は難しいが、先生に教わり、何とか技術を習得したい。野菜も来年には出荷できるように育てていきたい」と意欲を見せ、「俺ほど人に恵まれているものはきっといない。体力には自信があるので、ウメ栽培と農業で頑張っていきたい」という。

 長岡さんは「技術習得に少なくとも5年はかかると思うが、これから木のせんてい技術も教え、いい梅干しをつくっていきたい」と話していた。


写真=ウメの天日干しの作業に精を出す前川さん(手前)と長岡さん

    

[PR]



株式会社両丹日日新聞社 〒620-0055 京都府福知山市篠尾新町1-99 TEL0773-22-2688 FAX0773-22-3232

著作権

このホームページに使用している記事、写真、図版はすべて株式会社両丹日日新聞社、もしくは情報提供者が著作権を有しています。
全部または一部を原文もしくは加工して利用される場合は、商用、非商用の別、また媒体を問わず、必ず事前に両丹日日新聞社へご連絡下さい。

購読申込 会社案内 携帯版 お問い合わせ