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両丹日日新聞2014年3月15日のニュース

台風18号:水害半年 復旧進める人びと(上)

0315suigai.jpg 昨年9月15、16両日に台風18号が福知山市内に甚大な被害をもたらして半年が過ぎた。被災した地域には、いまも改修が終わっていない家屋があり、疲れが癒えない人たちは多い。そんな中で、少しずつ前を向き、復旧を進めている人たちもいる。

 生まれも育ちも戸田で、人生で5度目の水害を経験したという福山正昭さん(69)。地盤を高くして造った家でも、床上約50センチまで水につかった。

 9月16日朝4時、樋門当番の交代のため家を出る予定だったが、進もうにも50センチほどの高さの流れに足を取られて動けなかった。「本当にあっと言う間に水が上がってきた。昭和28年の時(28水)は徐々につかっていった印象やったけど、9年前の台風23号と今回の18号は一気に水が押し寄せてきた」。家族みんなで2階に避難し、収まらぬ水の勢いに「恐怖を感じた」と振り返る。

 自宅の泥だしなどの復旧作業は長く続いた。「家族の力だけでなく、ボランティアの人たちに手伝ってもらって本当に助かりました」と感謝する。

 自宅の改修工事は冬の凍える時期に始め、やっと完了した。だが、使っていた家具は椅子2脚を除いて水につかり、ほぼ無い。「やはり、家がつかるのはショック。水害さえなければ良いところなのに」とつぶやく。

 地区内のお年寄りの中には、気候が良くなってから工事をするという人もいるという。

■朝市「楽菜」きょう再開■

 福山さんは、戸田、石原、土の農地約50ヘクタールを管理する農事組合法人遷喬ふぁーむの代表理事を務める。5年前から、戸田の直売所で朝市「楽菜」を始めた。地元で取れた米や野菜などを手ごろな値段で販売し、多くの主婦たちから親しまれていたが、被災後は休まざるを得なかった。

 直売所も水につかり、今も壁には泥のあとが残る。直売所の中には、品物を並べる棚などを置いていたが、全て汚れてしまい、5、6人で丁寧に片付けた。

 「3月までには再開しよう」と、目標を持ってみんなで復旧を進め、水害から半年後の15日朝、再開にこぎつけた。久しぶりに農家の人たちと主婦らの笑顔が広がった。ただ、出された野菜は、いつもよりは少なかった。

■泥をかぶった農地 少しずつ元の姿へ■

 水害の後、手塩にかけて育ててきた刈り取り直前の稲、枝豆の紫ずきんなどは泥をかぶり、全く収穫できなかった。ビニールハウスや興の西中筋ライスセンターも濁流に襲われた。水が引いたあと、農家だけでは手の付けられないほどの状態になった農地は8ヘクタールある。市の支援を受けて、元に戻す予定という。
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 農地の復旧は簡単ではない。トラクターで耕して、見た目は元のようになっても、泥をかぶった土は、以前のそれとは違う。

 「収入はない。でも、何とかしないといけない」。農家には60代から80代の人たちが多く、農地を元に戻すには体力的にも経済的にも苦しい。

 楽菜に農作物を出している戸田の農家、福山弘さん(78)は、順調に育っていたハクサイなどが駄目になった。畑の小屋には、肥料や資材などを置いていたが、これも全て使えなくなった。

 泥をかぶっていた畑が乾いてから、トラクターで鋤き、苗を植えた。だが、あまり出来は良くない。

 「農家は、いつも3、4カ月先のことを考えている。本来なら種まきをしている時期に、泥をかきだすことになったんだから、つらかった」。それでも、再開した楽菜に長芋などを出すことができた。

 今は、ただでさえ野菜が少ない時期だが、多くの人が訪れて、買い物かごやキャリーバッグにいっぱいの野菜を購入していた。

 楽菜に毎週通っていたという東野町の60代女性は、半年ぶりの再開を心待ちにしていた。「作られた方の顔も見られるし、安全で安いところが良いです。地元の野菜は新鮮でおいしい。大変な水害に遭われたけれど、再開してもらえて本当に良かった」と喜んでいた。

 代表理事の福山さんは「集まってもらえるか心配でしたが、お客さんから『再開してもらって良かった』という生の声が聞けて、本当にうれしい。今後の励みになります」と話していた。

 楽菜は、16日午前7時30分からも品切れになるまで開き、今後も土曜、日曜に催す予定にしている。


写真上=苦難を乗り越えて、再開することができた朝市「楽菜」
写真下=大きな被害を受けた遷喬ふぁーむのビニールハウス

    

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