戦後13年間にわたり旧満州や朝鮮半島、シベリアから約66万人もの引き揚げ者、復員兵を迎え入れた舞鶴。貴重な資料を多数所蔵、展示している舞鶴引揚記念館(舞鶴市平)が、資料のユネスコの世界記憶遺産登録を目指している。16日には東京で推進のための平和シンポジウムを開く。
「岸壁の母」に代表される引き揚げの記憶は、戦後70年近くが過ぎて人びとの間から急速に薄れつつある。そんな中で引揚記念館は、戦争の惨禍を二度と繰り返さないためにと全国から寄せられた約1万2千点の資料を所蔵、公開。様々な文書類は貴重な歴史の証人となり、過酷なシベリアの地で抑留者たちが使っていたスプーンや粗末な防寒具などが、来館者の胸を強く締め付けている。
これら資料の世界記憶遺産登録を進めるため、市は様々な取り組みを進めており、16日には、午後1時30分から東京・新宿の新宿住友ビル47階、スカイルーム1で平和シンポジウム「シベリア抑留と引き揚げ 世界へ語り継ぐもの」を開く。東洋英和女学院大学大学院の増田弘教授が「シベリア抑留と引き揚げの歴史」と題して基調講演し、記念館の山下美晴館長が事業報告をする。この後、NPO法人舞鶴・引揚語りの会の谷口栄一理事長らでパネルディスカッションをする。参加無料。
■抑留描いた体験画展 交流の姿など多面的に■
一方、館内では常設展示のほか、4月23日まで企画展「抑留と交流と―木内信夫絵画に見るウクライナ抑留」を開いている。
旧ソ連による日本人の強制連行は「シベリア抑留」と総称されているが、シベリアのほか中央アジアや東欧など広範囲に及んだ。
千葉県柏市在住の木内信夫さんは、東欧ウクライナに抑留された一人。当時の様子をたくさんの絵にして、記念館に寄贈した。次々倒れていく仲間たちなど、つらい記憶のほか、ドイツやハンガリーなど他国の捕虜兵士をはじめロシア人の少年たちとの交流も描写。一枚一枚から「国境の壁を取り払えば、戦争の加害者や被害者ではなく、ひとりの人間としての姿や人種を超えた交流など多面的なシベリア抑留の側面が見えてくる」という。
記念館は午前9時から午後5時まで。会期中は2月20日、3月20日、4月17日のみ休館。入館料は大人300円、小学生から大学生まで150円。電話0773(68)0836。
写真=木内信夫さん「わが青春の浪漫抄」
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