福知山市内で唯一、手漉(す)き和紙を作る大江町二俣の田中製紙工業所で、厳寒期に行う「寒漉き」が始まっている。この時期に漉く和紙は特に良質で、身を切るような冷たさの中、伝統の作業が進められている。
田中製紙では江戸時代から、「丹後二俣紙」作りをしており、町内で自家栽培した落葉低木のコウゾを使い、年中和紙を漉いている。1、2月はコウゾからの原料作りと漉き作業が重なり、1年で最も忙しい時期になる。
厳寒期に漉く和紙は、作業の際に雑菌が繁殖しにくく、コウゾの繊維を分散させる役目がある植物、トロロアオイの粘液の粘度が長持ちし、良質な和紙ができるとされる。
作業をするのは5代目の田中敏弘さん(52)で、冷たい井戸水を張った漉きぶね(水槽)の中に、コウゾの繊維を溶かした液とトロロアオイの粘液を入れ、すだれを乗せた簾桁(すげた)という道具を使い漉いていく。
「ざぶ、ざぶ、ざぶ」と漉きぶねの中で簾桁をリズミカルに動かす。和紙の厚みを均等にするため、微妙に手を動かし、丁寧に仕上げていく。作業場内は外と変わらないほど寒いが、手がかじかむのも気にせず、黙々と作業する。
現在文化財の修復などに使う和紙を漉いている。田中さんは「この時期、作り手にとっては厳しい条件となりますが、良質の紙ができるので、寒い日が続けばいいのですが…」と言う。寒漉きは3月初めごろまで続く。
写真=簾桁を巧みに動かし紙を漉く田中さん
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